アクサが協賛する理由
フランスおよびヨーロッパの芸術と文化を守り続けてきた当社の使命と、日本市場への長年の貢献がこの協賛に込められています。大阪・関西万博を機会に、国際的な協力を推進し、未来世代へ持続可能な価値を創造することを目指します。
トーマス・ブベル
アクサグループCEO
2025 年大阪・関西万博への参加は、アクサが 1994 年から事業を展開する日本への深い愛着を反映するものです。フランス パビリオンへの協賛は、私たちが常に守り、国際的な普及を推進し、未来の世代に受け継いでいくことにコミットしてきた、芸術、 文化、そして創造性に対する私たちの愛を称えるものです。
フランスパビリオン紹介
『愛の賛歌』
フランスパビリオンのテーマは「愛の讃歌」。
日本文化には目には見えない糸で結ばれているという「赤い糸の伝説」があります。フランスパビリオンは、この赤い糸を通じて、「自分への愛」、「他者への愛」、「自然への愛」といったさまざまな「愛」に導かれる新しい未来のビジョンを提案します。また、人々や自然が結ばれているという考えをもとに、社会や環境が直面している課題への答えを示したいと願っています。
詳しくは 公式サイトをご覧ください。
©Coldefy & CRA-Carlo Ratti Associati
アクサ主催イベント紹介
Café de l'Art de Vivre〜愛と芸術と文化を結ぶ〜
2025大坂・関西万博のフランスパビリオンにて、5月2日に「“Café de l'Art de Vivre” 〜愛と芸術と文化を結ぶ〜」をテーマにイベントを開催。フランスにゆかりを持つ多様なバックグラウンドのゲストたちと共に、日本とフランス両国の国境を超えたアートやカルチャーへの愛について語り合いました。
イベントリポート
5月2日、世界中から多くの人たちが集う2025大坂・関西万博のフランスパビリオンにて、フランスと日本への「愛」、芸術や文化への「愛」について対話を行うイベント、「“Café de l’Art de Vivre” 〜愛と芸術と文化を結ぶ〜」を開催しました。フランス語で「生きる芸術」を意味する「l’Art de Vivre(アール・ド・ヴィーヴル)」 は、食、文化、芸術、人間関係など、日常生活を豊かにするための美学を多角的に追求するフランス文化の考え方。フランスパビリオンのテーマである「愛の賛歌」と、アクサの「芸術と文化を通して愛にあふれるインクルーシブな未来を描く」という思いは、まさに「l’Art de Vivre(アール・ド・ヴィーヴル)」 を包括した概念です。そんな双方の結び合う思いを、フランスにゆかりを持つ多様なバックグラウンドのゲストたちと共に語り合い、より豊かな未来構築のために何ができるか、そしてそのすべての根源となる愛について掘り下げました。
モデレーターを務める滝川クリステルさんの紹介の元、登場したのは書道アーティストのマーヤ・ワカスギさんと、モデル&プロデューサーのクララ・ブランさん。書道家としてフランスのボルドーを拠点に世界で活躍するワカスギさんには、本イベントのためにアクサの目指すべき姿のひとつである「One AXA(ひとつのチーム)」にインスパイアされた作品、「結-MUSUBU-」を揮毫いただきました。一方、パリ出身のブランさんは、日本で広告代理店に勤務する傍ら、美濃焼のアクセサリーブランド「ATELIER ROUGE(アトリエルージュ)」をプロデュースし、インフルエンサーとしても活動されています。そんなゲストたちを迎え、当社代表取締役社長兼CEOの安渕聖司と共に、5つのトピックスについて語るトークイベントがスタート。
ブランさんはフランス人の視点から、「来日して気がついたのは、例えばどうしたらお客さんに喜んでもらえるのか、敬語はもちろんテーブルの座り方など、相手への気配りが行き届いているところ。フランス人はわがままなので、他者を気遣う文化はすべてが学びでした」と、自身の気づきを共有しました。これに同調した滝川さんは、とあるフランスの常識を補足。「フランス語にも一応敬語はありますが、目上の人や上司と敬語で話すのは最初だけで、大概上司から『敬語はやめて』と言われてすぐにフランクに話すようになります」
逆に日本から見たフランス文化の良さについてワカスギさんは、「時間に対する考え方が日本とは異なり、例えば食事にしてもただ食べるのではなく、準備からデザート、食後まで、喋りながら楽しむ。その時間の使い方に感動しました」。そして、ビジネスにおいて学んだこととして、「フランス人は行き当たりばったりでなく、行き当たりばっちり。例えば準備が80%しかできていない場合でも、当日120%にしてくる。本番に強いというのを感じています」と述べました。
欧米系の企業で豊富なキャリアを持つ安渕は、「色々な企業で仕事をしてきた中でも、フランスの人は、日本の歴史や文化に対する感度が非常に高いと思っています。私は写真も好きで日本の聖なる場所(伊勢神宮、高千穂、出羽三山)を撮影した写真を会社の1室に展示しているのですが、フランス本社の幹部が来たときにその写真について色々と質問され、最終的にその幹部は同じ写真を2枚購入してパリの自宅に飾ることになりました。表層だけでなく、日本文化の背景を知ろうとするところが他国の人たちと違うなと感じました」と、自身の経験を交えて語りました。
海外に出てみて改めて感じる日本の素晴らしさについて、ワカスギさんと安渕は共に、「おもてなし精神と安全性」だと断言。相手のことを気遣う思いやり、リラックスして楽しんでもらおうという気配り、そしてなんといっても世界が称嘆する日本の安全性は、かけがえのない価値であると熱弁しました。
一方でブランさんは、フランスの良さをこう語りました。「自由でわがままでいられること。さまざまなバックグラウンドの人たちが集うのが当たり前のため、人と違うことに誰も驚かないんです。日本だとマイノリティと呼ばれるような人たちも、フランスではマイノリティにはならない。個を尊重するところがフランスの素敵なところだなと思います」
6歳で書を始めてから常に「書の冒険」というテーマが自身の中に存在し、自分にしか出せない美を模索し続けてきたワカスギさんは、日本からフランスへ拠点を移したことが、新たな冒険への旅となりました。「フランスに移住後、周囲の人から絵画の勉強をすることを勧められて、今エコール・デ・ボザール(フランスの美術学校の最高峰)の社会人コースに通っています。書は2度書きができない一回性の美ですが、絵画は色を重ねていくことで美を生み出します。あるとき、絵画の先生から『あなたの作品の影は何時?』と聞かれて意味が分からずに戸惑っていたら、お天道様の位置によって影の具合が変わってくるという話になったんです。僕はそういう勉強をしたことがなかったので、その考え方もまた、書をする上での新しいインスピレーションになりました」。また、アートに寛大なフランスの包容力を感じ、その恩恵を強く感じているとも語りました。
自身も美濃焼にインスパイアされたブランドをプロデュースするブランさんが、クリエイションやブランドにおいて大切にしているのは「伝統工芸の継承」。「日本の素晴らしいクラフトが、後継者不足により無くなってしまうことがとても悲しいので、自分が得意であるビジネスや発信という方法で力になりたいなと思っています。その例として、今は石川県にある日本最後のジャガードシルク織り工場のシルクを使用したスカーフをデザインしています。日本ではスカーフを着用する文化はあまり根づいていませんが、今後流行らせたいと思っています」
7年前の来日当初はシェアハウスで共同生活を送っていたブランさん。そこで、結婚や容姿のことなど社会のプレッシャーに悩む同居人たちの姿を見て、「そんなに頑張らなくてもいいよ、こんな選択肢もあるんだよ」という思いから、著書「フランス人だけが知っている『我慢』しない生き方 世界で一番、自分のことを大切にできる秘訣」の執筆に至りました。「フランスはダメなところもたくさんありますが、ひと目も自身の外見もまったく気にせず、マイペースに好きなことをやれる点は素晴らしいと思うんです」
安渕は経営者としての経験から、自分らしくあるための秘訣について、「人は画一化しやすいところがあるので、自分らしさを打ち出すには自分と自分の気持ちを大切にし、人と違うことを恐れないこと。人と意見や向いている方向が違うというその違いを個性だと思い、大切にすることで自分らしさがよりはっきりしてくると思います。そして、ビジネスパーソンとしては、オンとオフを明確に切り替えることだと思います」とコメント。
そんな自分らしさの一つとして、滝川さんは特に家族のことを気にかけていました。「結婚、離婚、共同親権、夫婦別姓など、社会では女性の方が『何で?』と思うようなことがたくさんありますが、今フランスではどう考えられているのかを教えていただきたいです」。フランスで同性婚をしているワカスギさんは、「G7で唯一同性婚ができない国が日本です。そして、個人的には夫婦別姓のチョイスがないというのは、すごく寂しいことだと思っています。もちろん色んなメリット、デメリットはあると思いますが、フランスでは特に混乱は起きていませんし、家族のあり方のチョイスがたくさんあっていいなと思っています」と応答。また滝川さんとブランさんは共に、フランスでは愛のない両親の元で暮らすよりも、別々の道を選んで幸せになっている父親や母親の間を行き来する方が子どもにとっても幸せだという考え方が一般的だと述べ、ブランさん自身も「母親の新しいパートナー、父親の新しいパートナーの間で家族が増えて、私自身ものすごくハッピーだった」と語りました。
選択という問題に対して、安渕も日本の現状を「今、日本ではいわゆる法律婚をすると、95%が男性の姓になっています。それは、たくさんの女性が自身のアイデンティティの一部を諦めてきたという歴史でもある。それがようやく最近になって経済団体が動き出し、女性側にも選択肢を与えましょうという流れになってきました。名前は人権の大事な一部なので当然のことでありながらも、なかなか実現してこなかった。ただ数年前と比較するとだいぶ機運は熟してきていて、少し前進しつつあるというのが現状だと思います」と回答。さらにトークは婦人科との付き合い方や養育費問題、子どもの性教育についてなどへと広がり、来場者たちも登壇者たちの話に大きく頷いたり質問を挟んだり、ときには冗談も飛び交うなど、インタラクティブな対話が生まれました。
日本が今後、多様性を尊重しながら開かれた国になるために大切なことは? 最後のトークテーマに対してワカスギさんは、自身の経験を基にその思いを言葉にしました。「高校生の頃はカミングアウトもできず、今ほど情報もなく、会話をする相手がいなかったので戸惑いもありました。そんなときにペン習字のお手本で、『共に人間なのだと言って、笑って許し合えたらどんなに素敵か』という言葉と出合ったんです。この言葉には自分への愛、他者への愛のようなものが詰まっていると感じ、以来この言葉が僕の表現の原点という思いがある。思いやりの心を持ち、男性も女性もみんな同じ人間だという究極の考え方が、グローバルにつながるといいなと願っています」
自分自身の先入観と戦わなくてはいけないと語るのはブランさん。13歳の頃から憧れていた日本に彼女が初めてやって来たのは20歳のとき。「シェアハウスに住んで初めて日本の友だちができたときに、その人が文句を言うのを聞いてびっくりしたんです。なぜなら、私は日本人は文句を言ったりしないという勝手な先入観を持っていたから。今でも色々なことに対して自分の先入観が強いと思うので、どんなときでも相手を深く知り、理解することを心がけています」
相手や相手の文化を理解することこそ、インクルーシブな世界を構築するのに必要なこと。安渕はそのためには、教育から日本を変えていきたいという。「子どもの頃から、さまざまな国の色々な文化に触れていくことが大切だと思っています。日本には今300万人ほどの外国の方がいますが、日本人が外国の方の家庭と触れ合うことは少ない。したがって、ヨーロッパのように道の角を曲がると、あまり言葉が通じない人が住んでいるような街はほとんどありません。私は多様性を増やすという意味でも、10年ほど前から軽井沢のユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC ISAK Japan)という学校をサポートしています。また、この万博というのも、世界には色んな国があり、色んな人がいて、色んな文化や言語があることを子どもたちに知ってもらえるいいチャンスだと思っています。知識は自身の豊かさにつながっていくものなので」
滝川さんもまた、子どもたちが多様な人や文化と交流をすることで、「子どもの頃から食のありがたみに気づく機会にもなるし、フードロスについても考えて行動するきっかけにもなる」と言葉を添えました。
笑い声やさまざまな意見が飛び交う中、会の終盤には来場者たちとアクサが手がけるワインで乾杯を行いました。
「アクサがワイナリーを保有しているのは、フランス文化を大切にし、守る一環ではないかと思うんです。フランスでは、実は色んな会社がボルドーにワイナリーを持っています」。安渕のこの言葉に一同はなるほどと声をあげながらグラスを傾け、会場の空気は一層の和らぎを見せました。
おいしいワインの後押しもあり、会場からフランスのグルテンフリー事情や、バケーションを楽しむ際の「吉方位と旅のルートについて」などユニークな質問も。これに対して九星気学風水学を20年ほど学んできたというワカスギさんは、吉方位を取ってフランスに移住した自身の体験を共有。「愛と芸術と文化と方位学は結ぶところがあると思うんです。九星気学風水は大吉の方位で引っ越すことが重要だと言われている学問で、僕がフランスへ越すとき、フランスは大凶の方位で先生から命に関わると言われました。もちろん信じるも信じないもその人の選択ですが、僕はニューヨークで3カ月ダブル大吉(複数の吉方位が重なることで、より効果的な運気の向上につながるという考え)を取ってからフランスへ渡りました」。その影響もあってか、「10年間ボーイフレンドがいなかったのが、今の旦那さんと結婚できた。これも宝くじだと思っています。こういう話をフランスの方にすると、『私のバカンスの吉方位を出して欲しい』というメールがたくさん来るんです。そういう感覚も、日本とフランスは近いなと感じます」。この回答には会場から驚嘆の声があがりました。
新たな知識と人との出会い、そしてワインのおいしさに祝福の笑顔を浮かべながら、途中インターミッションを挟んで行われた3時間に渡るトークイベントは、あっという間に終了の時間を迎えました。